Journal of Ojisan Studies
Vol. 1 | 2026 | Original Research

世界おじさん情勢報告2026 ― 我々は一人ではなかった

Anonymous Researcher
Department of Corporate Anthropology, Institute for Ojisan Research
Received: 2026年1月4日 | Published: 2026年1月4日

Abstract

働かないおじさんは日本だけの問題か?世界各国のおじさん事情を調査したところ、驚くべき事実が判明した。


はじめに:孤独な戦いだと思っていた

私はこれまで、弊社の大企業病おじさんたちを観察し、その生態を記録してきた。しかし、ふと疑問が湧いた。

「働かないおじさん」は日本固有の現象なのだろうか?

結論から言おう。我々は一人ではなかった。

世界中で、おじさん問題は発生している。そして各国は、それぞれ独自の名前をつけて観察を続けていた。今回は、その国際的な研究成果をまとめてお届けする。


日本:窓際族とその進化系

まずは我が国から。

nippon.comの調査によると、「会社に”働かないおじさん”がいる」と回答した企業は約49.2%。つまり、ほぼ2社に1社でおじさんが観測されている。

日本には古くから「窓際族(まどぎわぞく / Madogiwazoku)」という概念がある。

必要とされなくなった従業員は、窓際の席に配置され、新聞を読んで過ごすことが許される。

Japan Intercultural Consultingによれば、解雇が法的にも社会的にも困難な日本では、「会議から外し、意思決定に参加させない」という形で、暗に退職を促す。窓際の席は、直接の首切りを避けながら「調和」を保つための装置なのだ。

さらに過激な形態として「追い出し部屋(おいだしべや / Oidashibeya)」がある。窓すらない部屋に閉じ込め、名刺を取り上げ、何もさせないか、単純作業だけをやらせる。精神的に追い詰めて自主退職させるという、おじさんへの最終兵器である。

学名候補: Homo fenestrae solitarius(窓辺の孤独なるヒト)


韓国:꼰대(kkondae)王国

お隣・韓国には「꼰대(kkondae / コンデ)」という概念がある。

STEAR Think Tankによれば、kkondaeとは「年齢と経験を理由に、無条件の尊敬と服従を求める高圧的な年長者」を指す。

特徴的なのは以下の行動パターンだ:

  • 正しい敬語を使わないと激昂する
  • 「俺の若い頃は…」で始まる武勇伝を語る
  • 残業している部下を見て満足する(効率は問わない)
  • 小さなミスでも長時間の「잔소리(チャンソリ / 小言)」を開始する

驚くべきことに、最近は「若いkkondae」も観測されている。ミレニアル世代やZ世代が、入社数年の差を盾に後輩に対してkkondae的振る舞いをするのだ。韓国商工会議所の調査では、**63.9%**の職場で世代間ギャップが問題になっているという。

おじさんになる前から、おじさんが再生産される構造。これは進化論的に注目すべき現象だ。

学名候補: Homo generationis superioris(世代的優越を主張するヒト)


中国:躺平と擺爛 ― 若者の逆襲

中国では、おじさん側ではなく若者側が独自の進化を遂げた。

2021年、「躺平(tǎng píng / タンピン / 寝そべり)」運動が始まった。Wikipediaの解説によると、発端は羅華忠という26歳の男性が、Baidu掲示板に投稿した一文だった。

「私は工場を辞め、四川からチベットまで2,100kmを自転車で走り、今は本を読んで暮らしている」

これが若者の心を掴んだ。996(朝9時〜夜9時、週6日勤務)で働いても、住宅は買えない。結婚できない。生活は楽にならない。ならば、最低限だけ働いて寝そべろう、と。

さらに過激化したのが「擺爛(bǎi làn / バイラン / 腐らせる)」だ。Business Standardの記事によれば、「もう手遅れだから、いっそ腐らせてしまえ」という諦念を表す。

習近平政権は慌ててこれらの言葉を検閲対象にし、国営メディアは「躺平は恥だ」と批判した。しかし若者は静かに、ただ寝そべり続けている。

おじさんに反抗するのではなく、システムごと無視するという新戦術。これは世界に輸出され、「Quiet Quitting」として知られるようになった。

学名候補: Homo horizontalis resistens(水平姿勢で抵抗するヒト)


ドイツ:Innere Kündigung ― 心の中で辞表を出す

ドイツ人は哲学の国だけあって、おじさん問題にも深遠な名前をつけた。

Innere Kündigung」(インネレ・キュンディグング / 内なる辞職)。

ドイツ語の翻訳サイトによれば、これは「法的には辞職していないが、心理的にはすでに辞めている状態」を指す。1982年に新聞記事で初めて言及され、1999〜2000年の調査では約4人に1人がこの状態にあると報告された。

特徴的な行動:

  • Dienst nach Vorschrift」(規則通りにだけ働く)
  • 指示されたこと以外は一切やらない
  • 表向きは出勤するが、イニシアチブは完全に消失
  • 衝突を避け、静かに抵抗する

springerprofessional.deはこれを「巨大な問題」と呼ぶ。何年も続くこの状態は、組織の生産性を静かに蝕む。

日本の「窓際族」が組織から追いやられる側だとすれば、「内なる辞職」は自ら精神を撤退させる能動的な行為だ。哲学の国らしい、内面的な抵抗運動である。

学名候補: Homo resignatus internus(内的に辞職せしヒト)


フランス:35時間労働とプレゼンティーイズムの矛盾

フランスは2000年に「35時間労働制」を導入し、世界から「さすがおフランス」と羨望された。

しかし実態は複雑だ。

International Talent Partnersによれば、フランスには「présentéisme(プレゼンティーイズム)」という深刻な問題がある。18時前に退社すると白い目で見られ、Le Monde紙によれば「フランスは欧州プレゼンティーイズムのチャンピオン」なのだという。

35時間ルールは現場労働者向けで、ホワイトカラー(cadres)は週43.2時間働いている。2016年の統計だ。

「35時間制のせいで、フランス人は働かないと思われている。でもそれは現実ではない」

ある大企業の顧問は週45〜50時間働いているという。

つまり、制度上はゆるく、文化的には厳しい。おじさんたちは「いかに長くオフィスにいるか」で評価され、子持ちの親たちは「子供を迎えに行く言い訳」を毎日考えなければならない。

2017年には「接続遮断権(droit à la déconnexion)」が法制化され、50人以上の企業では勤務時間外の連絡を拒否できるようになった。法律で守らないと、おじさんの侵略を防げないのだ。

学名候補: Homo praesens absurdus(矛盾した形で出勤するヒト)


世界共通:ミドルマネジメントの絶滅危機

最後に、おじさんの主要生息地である「中間管理職」について。

Bloombergの分析によれば、2023年のレイオフの30%が中間管理職だった。2025年には41%の企業がマネジメント層を削減し、2022年5月から2025年5月の間にマネージャー職は6.1%減少した。

CNBCの報道によれば、Estée Lauder、Match Group、UPS、Citigroup、Amazon、Googleなどの大企業が次々とマネジメント層をスリム化している。

Gartnerのレポートは予測する。2026年までに、5社に1社がAIを使って組織をフラット化し、中間管理職の半数以上を削減すると。

おじさんたちの生息地が、テクノロジーによって縮小している。これは進化の法則だ。環境が変われば、適応できない種は絶滅する。

学名候補: Homo hierarchicus obsoletus(旧式の階層的ヒト)


結論:おじさんは世界遺産か、絶滅危惧種か

調査の結果、明らかになったことがある。

  1. おじさん問題は日本固有ではない ― 各国が独自の名前をつけて観察している
  2. 若者は世界中で静かに抵抗している ― 躺平、Quiet Quitting、Innere Kündigung
  3. おじさんの生息地は縮小傾向 ― AIとフラット化で中間管理職が減少中

しかし同時に、こうも思う。

おじさんとは、ある種の社会システムが生み出した適応の産物なのだ。年功序列、終身雇用、長時間労働を美徳とする文化。その環境に最適化した結果が「働かないおじさん」なのである。

環境が変われば、おじさんも変わるのか?それとも、新しい形態のおじさんが生まれるのか?

観察は続く。


参考文献

How to cite this article

Anonymous (2026). 世界おじさん情勢報告2026 ― 我々は一人ではなかった. Journal of Ojisan Studies, 1.